謎の渋滞 発生のメカニズム

2017.1.10 20:05 更新

読了時間:5分2秒

ナゾの渋滞はこうやって起きる…交通現象シミュレーターから学ぶこと

Traffic-Simulation

※出典:GIZMODO

運転手だって、人間だもの。(今のところ)

突然、前方の自動車たちの減速が始まって、ナゾの渋滞に巻き込まれたことってありませんか? 事故も起きていなければ、道路封鎖もなく、国賓車列だってないのに…。そんな交通現象をシミュレーションで解明できるモデルTraffic-Simulation(ベータ版)が登場しました。

こちらは、ドイツにあるドレスデン工科大学で「自然渋滞」とよばれる分野を研究しているMartin Treiber氏によるシミュレーションモデル。道路上のボトルネック交通混乱の相互作用によってどんな渋滞が発生するか、ウェブ上で体験できます。

環状の道路を走行する自動車たちの「スピード」「密度(走行台数)」のほか、自動車どうしの速度に「タイム・ギャップ」を生じさせたり、「最高加速/減速値」を設定したり…ページ上部にあるバーを少し動かすだけで車の動きが大きく変わったりして、やってみるとけっこう楽しいですよ。

…あれ? でもこういうシミュレーション、どこかで見たことがある…と思った人はさすが。遡ること2008年、じつは日本でも名古屋大学をはじめとする研究チームによって、リアル交通渋滞シミュレーション実験が行なわれていました。

実験ではドライバーたちは時速30kmの速度を保つよう、一定間隔を空けたまま走行するのですが、不意にスピードをわずかに上げたドライバーが前の車に接近してから、次第にブレーキを必要としたり行き詰まりが生じたり…という現象が見られます。

自然渋滞が発生する原因について研究チームは、シンプルに、道路上の密度が多いことが問題だと結論づけています。交通量には一定のレベルがあって、それを越えて道路上に走行する自動車の台数が増えた場合には、わずかな変動でも連鎖的に作用して、結果的に渋滞現象を引き起こすことが示されました。

さらに時を遡ること1998年には、「自己組織化」の物理について指摘した、ドイツのシュトゥットガルトにあるダイムラー・ベンツ・リサーチセンターのBoris Kerner氏も同様に密度について研究していました。

同氏によれば道路上の車は、自由に走行する状態、渋滞で停止する状態、その中間の「シンクロナイズド・フロー」とよばれる状態の3つに分類できるといいます。特に3つ目の状態が起きるときは、ドライバー同士の依存度が高く、たとえば前方の車が減速した場合、連鎖的に後方に影響していく現象が発生します。

特に速いスピードで走行している状況では、減速などのリアクションがたった1秒遅れただけで、大きなインパクトを生じます。イギリスのエクセター大学の数学者Gabor Orosz氏は、時速129kmから時速105kmに減速する車が引き起こすのは、そのうち収まる「さざ波」程度の影響力である一方、時速129kmから時速100kmに減速する車は後方に交通渋滞を巻き起こすとしています。

さてこうした結果は、冒頭のTreiber氏がデザインしたシミュレーションからも確認することができます。同氏は、将来的にはもっとインタラクティブなシミュレーションを追加して、架橋、車線変更のルール、スピード制限、車線閉鎖など他の要素がどのように交通の流れに影響を与えるのかを知ることができるようになる、としています。

とはいえ今回紹介した研究のすべては、ドライバーが人間であることが前提としたもの。自動運転車が普及する頃には、また新たな法規制のもと交通メカニズムが発生するのでしょうが、その話はまた未来に…。

Top image: Martin Treiber/Traffic Simulation.de

source: Boing Boing

Jennifer Ouellette – Gizmodo US [原文

(Rina Fukazu)

元記事を読む

gizmodo

関連記事

車に続いて信号もAIが制御?

運転が上手くなるテクニック

日本初 自動運転の車 8月発売
  • facebook
  • twitter
  • LINE
  • はてなブックマーク
  • ブーストマガジンをフォローする
  • ブーストマガジンをフォローする

同じカテゴリのおすすめ記事

新着記事

【PR】今こそ手に入れたい。ハローキティ50周年記念LEDシーリングライトでQO...

2024.3.21 09:00

ソーシャルボタン設置のメリットと効果的な設置方法

2024.3.14 17:00

記事の更新頻度はSEOに影響を与える?適切な記事更新について

2024.2.7 17:00

ブーストマガジンについて
ページトップ