【来年は余裕のある人になりたい】座禅ができるカフェ

2016.12.30 12:05 更新

読了時間:12分33秒

気がつけばもう年の瀬。振り返れば今年も、あっという間に一年が過ぎてしまった。薄々気付いてはいたが、年々、時間の体感速度が上がってきている。どんな一年だったか?と振り返ってみると、仕事が忙しくて余裕がない時に、妻の話をじゅうぶんに聞いてあげられなかったような気がする。
できれば来年は、心穏やかに毎日を過ごしたいものだ。しかし余裕を持つにはいったいどうすればいいのだろうか?
そんなことを考えていたときに、面白いカフェを見つけた。

それが「ZEN Cafe」というものだ。

なんでもこのZEN Cafeは、臨済宗妙心寺という日本最大の禅寺に属するお坊さんが、禅についてもっと気軽に感じてもらいたいとはじめたもので、各地のカフェを借りて、お茶を飲みながら禅を学べるというものらしい。

最近巷では「マインドフルネス」なんて言葉もよく聞くが、確かあれも仏教思想から端を発するものではなかったか…有名な経営者や新進気鋭のベンチャー社長なんかもハマっているらしい。

筆者は座禅なんてやるほど殊勝ではないし、かといってマインドフルネスも語れないが。「カフェで気軽にできる禅」には興味がある。

そこで今回は「初めてのZEN Cafe体験記」をお届けしようと思う。

 

禅とマインドフルネスの定義

ZEN Cafeに参加するにあたって、ちょっとだけ予習をしてみた。そもそも「禅」や、ブームになり始めている「マインドフルネス」とはなんなのだろう?

まずは「禅」。
今回のZEN Cafeを企画しているお寺の大本山である、妙心寺のWebサイトではこのように定義されている。

“禅とは心の別名です。
ひとつの相にこだわらない無相。一処にとどまらない無住。ひとつの思いにかたよらない無念の心境を禅定と呼び、ほとけの心のことです。”

うーむ、難しい。無相も無住も仏教用語であり、それぞれ

“一切の執着を離れた境地”
“心の中の一切の束縛を断ち切った、とらわれのない状態”

とのことだ。

つまり心を空っぽにする “空(くう)”の境地といったところだろうか。
いっぽう、マインドフルネスはというと、日本マインドフルネス学会は以下のように定義している。

“マインドフルネスを、「今、この瞬間の体験に意図的に意識を向け、評価をせずに、とらわれのない状態で、ただ観ること」と定義する。

なお、「観る」は、見る、聞く、嗅ぐ、味わう、触れる、さらにそれらによって生じる心の働きをも観る、という意味である。”

つまり、禅は「なにものにもとらわれない」のに対して、マインドフルネスは「今、目の前にあることにのみ集中する」ということが言えるかもしれない。なんとなく、禅のほうがいくぶん敷居が高い気がする。少なくとも事前リサーチではそのように感じた。

…と、ここまで調べたのだが、なんだか行く前に少し緊張してきてしまった。。。心の安らぎを得る企画なのにもかかわらず。

 

いざ、ZEN Cafeに潜入

会場は和食居酒屋「炭火ダイニング 豊和(ほうわ)」。場所は、なんと表参道にある。表参道なんて普段めったに出かけることがないので、ますます緊張が高まってくる。ちなみに参加費は1,000円でワンドリンク付きだ。にぎやかなメインストリートを外れて歩いていくと、和の風情を感じるエントランスが見えてきた。

ZEN Cafe

ZEN Cafeでなくても、もし表参道に来たら食事したいと思える、なかなか雰囲気のいいお店だ。店中に入ると、さらに奥の離れのようなところへ通された。そこにはすでに数人の参加者がいる。どうやら筆者が最後のようだ。

話を聞くと、みなさん、初めての参加らしい。怖そうとか難しそうとか少し否定的な意見が多かった。恐る恐る参加したといったところか。

ZEN Cafe

アンケートに記入する参加者のみなさん

ZEN Cafe

当日に配られた禅の説明資料とZEN Cafeのパンフレット

しばらくすると本日、禅について教えてくれる富岡 孝彰(とみおか こうしょう)さんが入ってきた。

ZEN Cafe

今回、禅を教えてくれる富岡孝彰さん

孝彰さんによると、このZEN Cafeのテーマは「今・ここ・自分」だという。先のことに心を飛ばさずに、今ここにいる自分に心をとどめる練習をしようということだ。

あれ、“空”ではないんだ…どちらかというとマインドフルネスと同じような感じなのだろうか?

説明に続いて参加者全員でストレッチをしたあとに、今回の禅、椅子座禅のレクチャーが始まる。座禅というと板の間に正座のイメージだったが椅子の座禅もあるのだ。知らなかった。筆者も正座がつらくなってきたお年頃。これはありがたい。

椅子座禅は「調身・調息・調心(ちょうしん・ちょうそく・ちょうしん)」の3つのステップで行われるという。

調身は「身」を整えるということで、椅子に深く腰掛け、両足はしっかりと地面につける。両手はどんな組み方でもいいので、へその前あたりに置く。そして目と口を軽く閉じる。

調息は「息」を整える。座禅を極めるということは呼吸を極めるということ、と言われるくらい大事だそうだ。ポイントは吐き呼吸を深く長く意識すること。身体に溜まったイヤなものを吐き出すイメージだ。

また、呼吸の奥義についても教えてもらった。数息観(すそくかん)というもので、息を吐くときに1から10まで数える。そして10までいったら1に戻るとのことだ。

もし数えている途中でなにか別のことを考えてしまったら、また1から数え直すそうだ。

あれ?これもマインドフルネスのやり方にあったな。座禅とマインドフルネスは意外に共通点が多いのかもしれない。

最後の調心は「心」を整える。これは上の2つのステップをしっかりできれば、自然と身につくそうだ。
そして、いよいよ実践である。

 

座禅をしてみよう

鐘の音と拍子木の合図で、座禅がスタート。お香が燃え尽きる約5分の間まずはやってみることに。
ついに初座禅である。

調身・調息をし、呼吸を意識するのだが、やってみるとこれが色々と考えてしまう。「この体験をどう原稿にまとめようか」だとか「ああ、昼メシ食べたいなぁ」だとか。余計なことが頭に浮かんできてしまう…。たぶん本当の座禅であれば、ペシペシと何度も肩を叩かれることになるんだろうなぁ…。ああ、まったくもって雑念が止まらない!普段もこんな雑念まみれに生きていたのかと困惑してしまう。

しかしそんな雑念ばかりの筆者の拠り所となったのが、数息観だ。様々な思いを振り払い、1~10まで数える。なるほど、そこに集中することで、確かに雑念は多少和らいだ。とはいえ、まだまだ調心には程遠いが…

1回目の座禅が終わると、そんな筆者の心を見透かしたかのように、数息観以外のもうひとつの方法を教えてくれた。それは“初念を大事にすること”だ。

初念とは最初に思い浮かんだこと。最初に思い浮かんだことをそのまま意識にとどめるようにするといいらしい。

たとえば、「お腹が空いた」と心に浮かんだら、それをそのまま持ち続ける。「◯◯を食べよう」「そういえばあそこのお店に行きたい」とかどんどん派生する思いをかき消して、ただ、お腹が空いた自分を見つめるのだそうだ。どんなくだらないことでも、それだけを意識して認めてあげることが大切らしい。

座禅が終了すると、そのあとはお茶と座談会になった。

ZEN Cafe

お茶請けのお菓子は本山・妙心寺のある京都の和菓子屋 鼓月の千寿せんべい

その中でこんな印象深い話があった。

「応無所住 而生其心(おうむしょじゅう にしょうごしん)」という仏教の教えの話だ。これは最初の定義にもあった、いわゆる心を空っぽにしよう、という話なのだが、孝彰さんいわく、空の状態とは心になにもない状態ではなく、何かに一生懸命になっている状態のことだという。例えば、

・気が付くと時間があっという間に過ぎていた
・夢中でやっていたらいつの間にかうまくいっていた

誰しもそんな経験をしたことはあると思う。それがいわゆる“空”の状態なのだ。そして、その状態は「子どもの心」と近いのだそうだ。

 

確かに子どものころは、何にでも熱中して遊んで、あっという間に時間が過ぎていった経験がある。

何かに一生懸命なときというのは今、向かい合っているもののことだけをしっかりと考えている。あとから考えると「無心」だったと思える。つまり“空”の状態とは、思ったことを心にとどめずに、すぐに言葉や行動に移すことができる心の状態ではないだろうか?と。今回はじめて座禅を体験して筆者なりに感じた。

そして、座禅はそういう心の状態を引き出す手伝いをしてくれていた。

そんなわけで、この1時間はホントにあっという間だった。もしかしたら筆者も“空”の状態だったのかな?

 

まとめ

あくまで個人的な感想だが、参加後は少なからずスッキリした気分になった。
ただぼーっとしているだけでは様々な思いにとらわれてしまうが、こういったルールや所作などが決まっていることで、心が集中できた。その結果、なんだか気持ちが和らいだように感じたのだと思う。

まだまだ、しっかりとした座禅を組もうとまでは思わないが、今日教わったことは続けてみたい。特にやるべきことが多いときは、いったん座禅を組んで、心を落ち着かせてから取り掛かるとよいと感じた。

また禅とマインドフルネスは、実際に体験してみると、事前に調べて想像していたよりも、近いのかもしれないとも思った。何か一つにしっかり集中すること。どちらもそれを目指しているように思う。

仏教用語で説明されたり、マインドフルネスとカタカナ語で言われると身構えてしまうのだが、やってみれば思ったよりも簡単なことだとわかる。

今回のZEN Cafeが、筆者の「禅」のイメージを壊したように、この記事がいい意味であなたの「禅」のイメージを覆すことができればうれしい限りである。ちなみに次回は1月26日(木)に開催予定だ。

 

臨済宗妙心寺派東京禅センター
〒154-0009 東京都世田谷区野沢3-37-2龍雲寺会館内
TEL:03-5779-3800
メール:zen@myoshin-zen-c.jp
ホームページ:http://www.myoshin-zen-c.jp/

ZEN Cafe in 表参道のスケジュールはこちら
http://www.myoshin-zen-c.jp/event/event_zencafe.htm

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