【ドローンキーパーソンインタビューVol.2後編】 Z軸を飛ぶ夢。ドローンと進む新しい映像世界とは

2016.9.12 12:05 更新

読了時間:15分24秒

ドローンインタビュー

前回は、「IoT」にセンシングデータではなく「映像」を掛けあわせることで新たな価値を創造する、その映像データ取得デバイスとしての可能性をドローンに見出しているというお話を伺った。
今回は、ドローンを活用した具体的な取り組みやビジネスモデルについて深く聞いていきたい。

【田口】今は空撮のお仕事の中でいろいろなドローン運用の実験を取り入れているとか。具体的にはどのようなことをしているのですか?

何気なく撮影しながら、実はいろいろと実験していますよ。例えばこれは、一つのカットの中で夕方から夜に時間を変えるという映像です。プログラムでドローンを同じ飛行ラインで飛ばして、違和感が無いようにつなげています。


ドローンで見る東北大学片平キャンパス

【田口】違和感無いですね!これは、そう言われないと気付かず見てしまうかもしれません。

そうなんですよ!でも、どうやって撮ったの?…って考え始めると、不思議でしょ?今度はある場所で季節を通してコレをやろうとしていまして、青葉から夏の景色になって紅葉して雪になる…みたいな感じです。ワンカットで季節が変わっていくようなイメージの動画を作りたいと思います。
ある建築現場では、工事現場を一周する映像を1年半がかりで撮りためて、土台の掘削から建物が建つまでを一つのカットで表現する動画の撮影を始めました。

このように、通常のプロモーション動画の制作においても、IT屋らしい技術を取り入れて差別化を図るとともに、今後の研究開発のノウハウとデータをため込んでいます。

【田口】ちなみに、PR動画制作の仕事はどのような依頼が多いですか?空撮のニーズがどこにあるのか気になりまして…

現状で言うと、まずは地方創生のプロジェクト、特にインバウンド向けの予算が自治体に下りていますので、自治体からの依頼でこういったPRビデオを作っています。


グリーン復興ツーリズム 【まるごと金華山歩 】 日本山岳遺産上級山岳ツアー

あとは企業や学校などで、特に建造物のPRをしたいという依頼があります。特に多いのは、学校だと大学と中高一貫校、企業では工場とかデータセンターを持っているところ、あとはお寺もあります。


【4K空撮】正法寺 – DJI Phantom3 Professional

【田口】データセンターとは意外です。どんなご依頼ですか?

例えば先日いただいたお仕事は、とある会社が新潟県長岡市にデータセンターを作るということなのですが、建設予定地はまだ更地で何もありません。長岡って首都圏から遠いイメージがありますが、実は近いということと、更地にこんなものができますよ、という2点をアピールする動画を作って欲しいという依頼がありました。制作した動画では、更地を空撮した映像にデータセンターの完成予想CGを重ねて、完成後のデータセンターのイメージを作りました。

【田口】ここにこんなものが建ちますよ、というイメージ映像を作られたのですね。

実写とCGを重ねた動画って、CMとかでは何百万円〜1千万円以上かけて作るわけです。ところが今は、背景の実写の空撮はドローンでできるし、CGもパソコンでできちゃうから専用機器を使わずにすごく少人数でできます。すると金額が一桁違うわけです。

ですので、IT企業が映像を制作すると大幅なコストダウンができます。これは意味がありますし、最新のITデバイスを使って映像制作の世界に入っていくチャンスだと、僕は思っています。

【田口】なるほど。ITを使いながら質を上げつつコストを下げて制作する。

今までの映像の世界の分布を考えると、まずいちばん手軽なところに個人が撮る映像があったのですが、その上はいきなりCMになってしまっていたんです。お金を出して映像を作る=CMという感じです。ですので、いきなり何百万円の話になってしまいます。

しかし今は、イベントで使うとか、Webで動画を使うというニーズがすごくあると思います。例えば、CMのクオリティまでいかなくていいけども、なるべく高品質な動画が欲しい。でもコストは10分の1で作りたい、というニーズです。ITを活用して高品質なものを作る、というところに市場はあると感じています。

【田口】そうですね。自分もそのことはすごく感じています。特定の人に向けた動画や、集客を目的としてYouTubeに掲載する動画などのニーズがすごく多いと思います。市場性は低いものの、クライアントにとってはどうしても必要な動画ですね。

そうですね。ほかには、建設系のクライアントから、YouTubeやWebに掲載する求人・教育用動画制作の依頼もありました。建設業界は、人手不足に困っています。そこで、まずは人を集めるということと、来た人に対しての教育、そのための動画を作りたいというお話をいただいています。


京都府 北大河原トンネル 現場見学会(2016.2.9)

元々弊社では、複数のカメラを一つの画面でモニタリングできるViewCamStationという月額固定サービスを提供していました。最近このサービスに、ドローンなどの映像提供も加えたんです。施工プロセスの見える化や工事の進捗管理、施主への報告、人材確保や教育用を目的としていて、既に大手ゼネコンさんからオーダーを頂き先月からサービスを提供しています。

【田口】月額固定のモニタリングサービスにドローンの映像提供を加えたことで、幅広い動画ニーズに答えられるようになったんですね。

そうですね。クライアントとしてもローコストに動画が作成できます。僕らもいちいち空撮でいくら、ではなく、何回も撮りますよと言っています。世の中には、ネットワークカメラで何かをやる会社はもちろんあるじゃないですか。ドローンの空撮をやる会社もある。こういうインタビュー動画を制作する会社もある。

でもそれらを全部できて、更に自動飛行によるカメラワークを実現したりCGと合成したりする会社はないんですよ。様々な提案ができると思っていますし、色々な表現をリーズナブルに実現できる分、課題解決型の動画を制作できるかなと。

【田口】ほかの映像制作系の会社とはぜんぜん違う、新しい切り口ですよね。映像を活用して問題解決に役立てています。

工事現場は今、i-Constructionが盛んに言われていますが、土木って有史以来ずっと人間がやっているんですよ。ある意味完成されているから、ITを活用したところで、補助にはなるかもしれないけどそんなに生産性は上がらないんじゃないかと感じています。つまり、劇的なコストダウンにはならないんですよね。それよりも人手不足の解消や、モラル向上のための教育に関して、ITや映像は貢献できそうだなと思っています。

それと、農業や建設の方々と話していてもうひとつ最近わかってきたなと思うことは、一番の高性能センサーって、プロの目なんですよね。それを超えるセンサーはないんですよ。なので、そこにインプットしたほうがそのセンサーを活かせるなと思って。

よく言っているスマート農業やi-Constructionでも、まずはフィールドで働いている人たちに「業務に役立つ映像」「課題を解決する映像」を渡すという段階があるんじゃないかなと思っています。

【田口】佐々木さんの中でドローンの活用は、今は進化の過程のひとつですよね。今イメージしているその先にあるものは何ですか?

やっぱり自動で飛ばすことですね。全自動で飛行して、点検業務など、見て回るのを効率化できるのではないかなあと。そうすると、人がいなくなるのではなくて、専門に特化した人が、もっと専門的なところに集中できると思うんですよ。今は見に行くところに時間と労力をすごく取られている。だから、人手不足になる。あとは、移動時間とかね。そういうのがあるから、大変なんですよね。それを除いてしまえば、もっとプロフェッショナルな仕事になるはずなんです。労働じゃなくてね。

それの手伝いができるのが、映像であり、ドローンであり、IPカメラかな。そのときにドローンは精度を高く自動に飛ばすということが大前提かなぁと思っているので、そこをなんとかできればと思います。

ドローンが社会インフラになるという意味では、自動化になって初めてそうなるんだと思うんですよね。僕とドローンの出会いは、ドローンは自動で飛ばせるという所からこの世界に入ったので、ずっとそう思っているんですよ。プログラムをして、飛ぶものがドローンである、と。今はまだ、自動でできないから、人が代わりに操縦しているだけです。

【田口】でも佐々木さんはドローンを操作するのが好きなんじゃないんですか?ジレンマもあるんじゃ?

勿論、趣味としては有りですよ。これは乗馬と一緒ですよね。馬で移動はしなくなったけど、乗馬という趣味は残っているでしょ(笑)。それに、自動化できない分野は必ずあると思っているんですよ。ひとつは、空撮ってアングルが重要だから、プログラミングをして偶然撮れた映像では成り立たないです。

ただ、業務的な飛行は全部自動化されるだろうなあと思っています。私は両方共やっていて、飛ばすのは飛ばすので当然楽しいですよ!でも、自動飛行は自動飛行で、手動操作では表現できない映像表現ができて面白いんですよ。映像の可能性をものすごく探求できるなあと。

ドローンを使うと、今まで人間が撮れないカットを撮れるじゃないですか。いい意味ですごく中途半端な。ヘリコプターはここまで寄れないし、かといって人では届かない俯瞰図を、動画も写真もすごく手軽にできるじゃないですか。

もちろん、全体のシナリオ、構図やカット割り、音楽との調和など、動画編集の基本は変わりませんが、撮影のテクニカルな部分は最新のITデバイスでだいぶカバーできる時代になって来たのではないかと思います。

【田口】逆の発想ですよね。技術先行じゃなくて、発想さえあればツールはあるので。

ドローンって、飛んでいるのを見ているだけでも楽しいじゃないですか。ドローンで撮影するとお客さんが自然にニコニコするんです。

それから、ドローンを使うとお客さんも一日撮影に付き合ってくれるので、お客さんと話しながらコンテンツを作れるんですよね。課題とかニーズとか、こう撮りたいという希望を、画面を見ながらリアルタイムに聞いて撮影できちゃうんですね。ここはすごく重要です。そういうプロセスを体感していると、ドローンって撮影の仕方まで変えちゃっているなって思っています。

【田口】映像制作しながら、同時にお客さんの深いニーズを汲み取れるわけですね。

映像って、撮っただけでは何の役にも立たない。分かりやすいけど膨大過ぎるので。素材って何十GBも撮るでしょ。それをボンっと渡されても、何もできないわけですよ。編集してカット割りして音楽をつけるから成り立つわけで、誰か料理しなくてはならないんですよ。

映像は、ビッグデータのカタマリでもあるじゃないですか。しかも、人間にわかりやすい視覚情報のカタマリで、いろんな情報が含まれているわけです。そこをどうやって引き出すかが技術力だと思うんですよ。それこそが我々が本業でやっている映像解析であり、空撮で言うと編集であるという気がします。

【田口】最後に、佐々木さんにとって「ドローン」とは何ですか?

やっぱり夢がありますね。それは事業という意味合いも、あとは自分のやりたいことを実現するという部分でも。それに、人類にとっても夢だと思っています。なぜならば空間を手に入れたんですよ、ドローンのおかげで。

今まで人間は平面で生きていたわけですよ。ビルも単純に平面が多層化されているだけで、X軸とY軸の世界なんです。飛行機やヘリコプターを操縦していた一部の人たちだけが、Z軸をある程度制約の中で移動できた。でも、ドローンはそのZ軸をかなり自由自在に使うことができる。擬似的だけど、人間が実際に飛び回るわけじゃないのでその分安全です。鳥が生きている空間を手に入れて、人間が空を飛べたのがドローンだなと思っています。

しかも、GPSやジャイロなどの各種センサーを積んで、通信ができてカメラが付いているデバイス、つまりスマホが空間を自由に移動できてモノまで運べる。当然クラウドともつながる。ということは、これからは人間がZ軸の自由度を手に入れて、何ができるようになるのかってことですね。この先、空間を使って色々なことを色々な人が考え出しますよ。そういう意味合いで、夢をかなえる道具だな、と思っていますね。

【関連ニュース】
トライポッドワークスとアイネットが事業提携し、ドローンIoTプラットフォーム事業に参入するというニュースが2016年9月6日に発表されました。

インタビュアー紹介
田口 厚

インタビュアー:田口厚株式会社 Dron é motion(ドローンエモーション)代表取締役
1998年〜IT教育関連NPOを⽴上 げ、年間60回以上の⼩学校現場 における「総合的な学習」の創 造的な学習⽀援や、美術館・科 学館等にてワークショップを開 催。その後Web制作会社勤務を 経て中⼩企業のWeb制作・コン サルティングを主事業に独⽴。
2016年5⽉株式会社Dron é motionを設⽴、IT・Web事業のノウハ ウを活かしながら空撮動画制作・活⽤⽀援を中⼼に、ドローンの 活⽤をテーマにした講習等の企画・ドローンスクール講師、Web メディア原稿執筆等を⾏う。「Drone Movie Contests 2016」 ファイナリスト。
http://www.dron-e-motion.co.jp/

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