高血圧と騒音の相関関係

2017.3.29 17:05 更新

読了時間:12分13秒

仕事にも健康にも、静寂がいちばんな理由

仕事にも健康にも、静寂がいちばんな理由

※出典:lifehacker

耳を澄ませてみてください。おそらく、何か聞こえるはずです。サイレンの音、換気扇のまわる音、かすかに聞こえる誰かの会話、時計のチクタク音。この世界には、完全な静寂はほとんどありません。あまりにも珍しいため、完全な静寂に遭遇すると衝撃を受けるほどです。

私たちは、時に被害を受けるほどに音を歓迎しています。静寂は、もっとも認識されていない生産性ツールと言えるのではないでしょうか。そこで、ノイズについて考えてみたいと思います。

 

ノイズの問題

削岩機の不快な音やロックコンサートの爆音が聴力に悪影響を及ぼすことは常識です。でも、有害なノイズはそれだけではありません。

毎日のノイズには、有害なものが2種類あります。1つが過剰なノイズ。空港近くでずっと続く大きなノイズなどです。もう1つが、身のまわりの一般的なノイズによる妨害。会話や職場の同僚からの中断などです。

前者のほうが有害そうに思えますが、実際はどちらも、生産性と正気に悪影響を及ぼす可能性があるのです。

過剰なノイズは健康に悪い

過剰なノイズのそばにいると、健康に深刻な悪影響があります。疫学者によると、高速道路や空港などの慢性的な騒音源と高血圧の間には相関が認められるそうです。高血圧は、脳や腎臓に損傷を与えるなど、ほかの健康リスクへとつながります。

ほかにも、ノイズと睡眠不足、心疾患、耳鳴りの間の関係も指摘されています。常にうるさい場所に住む人は、ストレスホルモンが高い傾向があります。

フローレンス・ナイチンゲールは、静寂を看護における重要なパートと位置付けていたと言われています。それなのに、現代の病院は昔に比べて極めてうるさくなっています。病棟へのテクノロジーの導入が進み、病院の平均騒音レベルは、世界保健機関が定める処置室の病院騒音ガイドラインを大きく上回っています。つまり、患者の健康や回復に悪影響を与えています。そのような騒音環境では、医師でさえも発音が似た薬を混同することがあります。このように、過剰なノイズは命取りのミスをもたらす可能性があります。

コンスタントな中断は集中力を削ぐ

では、空港や高速道路の近くに住んでいない人は関係ないかというとそうではありません。日常的なノイズによる悪影響もあるのです。

多くの人にとって、日常のノイズは中断や妨害を伴う傾向があります。同僚、会議、電話、騒がしいカフェ、街のノイズ、ケータイの通知音など、すべてが働く私たちの注意力をそらします。

仕切りや壁がないオープンプランのオフィスで働く人にとって、それはもっと重大な問題かもしれません。「Milanote」のCEOであり「Navy Design」の学際チームにも属しているオリー・キャンベル氏は、オープンプランオフィスには独自の暗示的価値観が伴うと述べています。そのようなオフィスは、妨害は受け入れられる、何よりもコラボレーション優先、中断されてもセレンディピティに価値があるという感覚を与えます。キャンベル氏はこう言います。

多くの職場において、集中力は成り行きに任せられています。誰からも会議に呼ばれなければ、自由な午後を得られるかもしれません。

そうなるのは、幸運な場合に限られます。

仕事中の妨害や中断はあまりによくあるため、私たちはそれらを過剰なノイズとすら思わなくなっています。職場での妨害というノイズが聞こえないと、それが顕著になります。カリフォルニア大学アーバイン校の研究によると、知識労働者は中断と中断の間に平均11分しか集中時間が取れていないそうです。キャンベル氏はこう言います。

集中が必要なら、「仕事場」ほど仕事に向かない場所はありません。

確かにコラボレーションは重要ですが、集中だって大事です。特に、クリエイターならなおさらでしょう。知識労働者にとって、仕事は自分と白紙の間で発生します。妨害やノイズは、そのプロセスを中断するもの以外の何物でもありません。

中断、妨害、バックグラウンドノイズ、そして全般的な平穏や静寂の欠落など、オフィスのノイズは有害です。オフィス内の騒音、窓の外の喧騒、3分おきに入る妨害、そんな中では、価値あるものを生み出すことはできません。

静寂の恩恵

文字通りの騒音と、より全般的な職場の混乱という両タイプのノイズをシャットアウトすることで、集中力と最高の仕事を生み出す能力を高めることができます。

以下に、ノイズを静寂で置き換えるべき理由を説明します。

静寂は脳に休息を与える

長年、音や騒音の効果を測る実験において、静寂が対照群として用いられてきました。静寂そのものの魅力が見いだされてからは、対照群というよりも注目すべき対象として静寂の効果が脚光を浴びるようになっています。

さまざまな種類の音楽に対する脳の反応を試す実験で、さまざまな音楽クリップの対照群として静寂が用いられました。ところが、実際は静寂が興味深い効果を持つことがわかりました。いわゆる「リラクシング」音楽と呼ばれるものと比べて、音楽と音楽の間の2分間のポーズ中の静寂のほうが、脳をリラックスさせることが証明されたのです。これは、静寂の効果がノイズと対比することで示された一例です。

静寂のリラックス効果に対する強力な反応はおそらく、外の世界から妨害されないときの脳の作用に関係します。研究によると、脳が本当に静かになることはありません。脳は、意識的活動に積極的に関与していないときでも働いています。実際、意識的活動に脳が関与しているときは、それが脳の「デフォルトモード」より優先され、一時的にリソースがやりたいことに流用されることが科学的に示唆されています。

つまり、完全な静寂は、脳が通常のデフォルト状態に戻って、その処理を継続できることを意味します。

脳の継続的なバックグラウンド処理は、私たちの脳が出す音にも関係します。たとえば、良く知っている歌が歌詞の途中で中断された場合、脳は次のフレーズの音を創り出し、そのギャップを埋めようとします。実際耳からは何も聞こえていないにもかかわらず、心の中で音がつくられるのです。音の神経学の専門家、ロバート・ザトーレ氏はこう言います。

音がないとき、脳は音の代わりになるものを内部で生み出す傾向があります。

静寂は脳にとってリラックスできるだけではありません。ネズミを使ったある研究では、毎日2時間静寂を聴くことで、記憶力をつかさどる海馬で新しい細胞の成長が促進されることがわかりました。新細胞の成長は必ずしも健康に恩恵をもたらすわけではありませんが、この実験では、新細胞はマウスの脳内で新しくて機能するニューロンになりました。言い換えると、静寂によって少し賢くなる場合があるかもしれません。

静寂では最高の仕事ができる

周囲の世界をシャットアウトできる能力は、静寂による純粋な恩恵以上のメリットをもたらします。心理学者ジョナサン・スモールウッド氏はこう述べています。

クリエイティブ思考と長期的判断は、問題に対する新しい解決策を生み出し、目標に達成できるほど長く計画に執着することを可能にします。外的環境が十分に穏やかな場合、外の世界から離れる能力は、あらゆる人間の努力にとって重要なスキルセットを反映するようです。

つまり、スキルが成功達成を助けるのです。

世界のノイズから離れる習慣が有益であり構築すべきだと考えているのは、スモールウッド氏だけではありません。フランスの数学者で哲学者のブレーズ・パスカル氏は、人間はもっと静かになることを学ぶべきだと考えていました。同氏は、こんな名言を残しています。

すべての人間の不幸は、部屋に1人で静かに座っていられないことに由来している。

「CDBaby」の創設者でライターでもあるデレック・シバース氏は、世界のノイズから離れて1人の時間を過ごすことが、新しい作品を生み出す最高の機会となると述べています。

私は人が嫌いなわけではありません。もう1つの人生のベストタイムは、人と過ごす時間です。でも、部屋にただ座っていること、素晴らしきクリエイティブなフローに注目が集まっているのは興味深いです。それは、世界の騒音から解放される時間です。

シバース氏は、電源やインターネットにつながれない静寂の時間を過ごすことが、最もクリエイティブに感じるようです。

静寂は、思考にとっての素晴らしいキャンバスです。

デザイン会社「Navy」では、オフィスで仕事を終わらせるのが本当に困難でした。コンスタントな妨害と日常的なノイズのせいで、本当に集中が必要な社員は皆、家から出ないという問題になっていました。これを改善するために、Navyチームは毎日の「クワイエットタイム」を導入することにしたのです。

Navy本社では、ランチ前は完全な静寂とすることでチームが合意しています。それは、直接だけでなく、オンラインでも。メール、スラック、肩をたたくことはもちろん、会議などはもってのほか。集中できるように、携帯電話も引き出しにしまいます。キャンベル氏はこう言います。

クワイエットタイムは契約です。週に数時間ぐらい、働きたくなくても働くことで合意する時間があってもいいでしょう。

クワイエットタイムは定着まで数カ月かかりましたが、4年が経過した今、生産性は23%高まったそうです。全体的なストレスも減り、1週間のうちに多くの仕事をさばけるようになったため、金曜の午後を休みにすることもできています。

これで、仕事場が仕事をするためのベストな場所になったのです。


いつでもノイズから逃げられるわけではありません。サイレンは鳴るし、空港には何時間も前から行かなければならないし、同僚を黙らせることはできません。それに、うるさいカフェで働くことや、コンサートに行くこともあるでしょう。

でも、できることなら、静寂を選んだほうがよさそうです。職場に厳格なクワイエットタイムを導入することからはじめてみてはいかがでしょうか。短くてもいいので静寂の時間を見つけ、静寂をじっくり味わってみてください。もしくは、可能なら防音工事をして、家やオフィスから一貫したノイズを追い出しましょう。集中力が増し、健康にもメリットがあるので、それだけの価値はあるはずです。

静寂と平穏の空間を見つけることで、健康が改善されるだけではなく、最高の仕事ができるようになるでしょう。

The Power of Silence: Why You Need Less Noise for Work and Your Health | Zapier

Belle Cooper(原文/訳:堀込泰三)

Image by Antonis Spiridakis via Unsplash.

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Lifehacker
 

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